地方創生 インタビュー

【インタビュー小野泰輔さん】蟻の一穴で風穴を開ければ、そこから一気に変わる。

小野泰輔さんのロングインタビュー。後編は、熊本県副知事時代のお話から、地方自治体と教育事業などについて伺いました。(前編)「今の常識ではなく、新しい常識をつくる。」と併せてお読みください。

——シビレはさまざまな自治体と事業をさせてもらっていますが、熊本県さんとご一緒させていただいた時に、そのスピード感や意思決定の速さを感じました。これは副知事時代の小野さんの功績ではないでしょうか。

小野 確かに企業誘致に関しては頑張りました。それまでの伝統的な企業誘致政策は半導体や自動車に偏っていて、そういうものが集積するのは工場用地を昔からふんだんに用意していた県北なんですね。県南の人吉や球磨、八代や水俣には全然こなかったので、それでは駄目だろうと、県南の方にも企業誘致を進めました。工場用地がないから無理だと言われたのですが、ベトナムやミャンマーに対抗して地方に工場を作って安い賃金で若者を働かせるなんて、30年も40年も前の発想はやめましょうと。ITなどどこでも勝負できるものがあるんだから、そういったものを誘致しましょうと言いました。

ところがなかなかみんな考えが変わらないわけですよね。そこで大変苦労しましたが、少しずつ変えていって、今まさにシビレの皆さんが会ったような企業立地課の人たちが動いてくれていて、さまざまなIT企業が八代や人吉に集まってきています。副知事を辞める前の年には県政史上最高の県南の誘致件数となりました。だから本当はやればできたんです。ビジョンを持ってちゃんと絵を描けば、1年2年はかかりますけれども結果は出ます。

——このコロナ禍の状況をチャンスだと前向きに捉えることが難しいのが、これまでのお話に挙がっている学校や自治体だと思いますが、私たちの「Seamless JAPAN」というビジョンと思いは、学校に対しても自治体に対しても、もちろん企業に対してもマッチするものだと確信していますので、より一層使命感と自覚を持って頑張ろうと思いました。

小野 細かいこだわりばかりが多くて全く前に進まなかったり、どうでもいいような話で詰まったりしてくじけそうになることもありますけど、大事なのは「思い」です。あとは、最初の道を切り開くには、抱えている問題を何とか解決しようという意識を持っている個別の学校や自治体と一緒に動かしていくのがいいと思います。宮城県内のどこかの学校と首都圏の学校、東京だとなかなか難しいかもしれないですけど例えば埼玉とか千葉の学校と一緒に突破口を開けていく。全体を大きく動かそうとするといつまでたっても変わらないんですが、蟻(あり)の一穴で風穴を開ければ、そこから一気に変わっていきます。

孟母三遷(もうぼさんせん)の故事ではないですけれども、働く場所をどう選ぶかは、自分がやりたい仕事があるかどうかもありますが、子育て世代にしてみればやっぱり教育がしっかりしているところに行きますよね。ですからシビレさんにはぜひ教育の事業展開もしてもらって、企業誘致や優秀な人材獲得には教育も大事ですよと自治体に働き掛けてもらって、学校改革を進めてほしいですね。それが、より魅力的な地域に移りたいという人たちを引き付けることにもなると思います。

単に転職のことだけをやっていても問題は解決しなくて、せっかく移り住んで来た人が壁にぶち当たって、やっぱり東京に戻りますとなってしまいますから。そこは行政的な視点も必要で、ビジネスや人材だけではなく、教育や医療、地域全体の暮らしやさまざまな仕組みのことまで視野を広げて事業を展開されると、自治体からも信頼されるでしょうし、得られる成果も非常に大きくなると思います。そういう幅広い視野でいろいろと挑戦していってほしいですね。

——たくさんやることがあるなと改めて感じましたが、シビレはビジョンの共感度が高い組織だと自負していますので、ちょっとずつ進んで下がってみたいなことを繰り返しながらでも、「Seamless JAPAN」のビジョンに向かって進んでいきたいと思います。諦めの悪さもわれわれの強みですから。

小野 それはいいですね。どうしてもそんなに簡単には動きませんが、動くときは一気に動くので、それまでやり続けることはとても大事です。徳川家康は戦はあまり強くなかったという話があります。戦国時代の武将としては上杉謙信が勝率が高くて最強といわれていて、家康は三方ヶ原の戦いで武田信玄にボロ負けもした。でも結局天下を取ったのは家康ですよね。成功を数多く重ねた人が勝つとは限らなくて、優秀さとか強さとかではなく、物事を成し遂げるのはおっしゃるような諦めの悪さ。自分が行くべき方向に向かって続けられる人が一番強いと思いますので、ぜひ頑張ってください。

(前編)「今の常識ではなく、新しい常識をつくる。」へ

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