地方創生 インタビュー

【インタビュー小野泰輔さん】今の常識ではなく、新しい常識をつくる。

2020年6月まで熊本県副知事を務め、「くまモン」の著作権フリー化に尽力。8,000億円超もの大きなビジネスに発展させた小野泰輔さん。2016年熊本地震では復興の指揮を執り、新型コロナウイルス感染症などの危機管理に奔走。現場を歩き、当事者と共に悩み、問題を解決し続けている小野さんに、「地方と東京」双方の視点から、シームレスな世の中についてどのように考えられているのか、お話を伺いました。(前編)

——シビレの新たなビジョン「Seamless Japan」について率直なご感想をお聞かせください。

小野 働き方だけでいえばいい考え方だと思いますが、独身の単身者でないと難しい面もあって、シビレさんは自治体との包括連携協定も結ばれていますから、ぜひ教育の面でも「Seamless Japan」を目指していただきたいです。東京で暮らす人が仙台で働くから家族も一緒に行くとなって子どもが転校した先で、例えば学習指導要領に沿って、その子どもがどういうことが分かっていて、何が課題なのかが全部カルテのようなもので示されていて、問題なく普通に通えるというようなことです。そうするともっと人材の流動性も高まりますし、いじめの問題もなくなると思うんですね。

嫌な友達と仲良くする必要はないし、どこでだって友達はつくれてどこでだって勉強はできるんだと。その方がより良い社会になると思いますが、もちろんそれには学校の協力が必要です。都心だとそういう意識は低いかもしれませんが、私が副知事を務めていた熊本県の多良木町では高校が廃校になるという課題を抱えていたので、外から入ってくる子どもたちはもうウエルカムでしたし、同じ球磨の山江村は全国トップクラスのICT教育をしていました。そういう意識があるような首都圏の学校を取っ掛かりとして見つけるのも大事かもしれません。

同じ学校にずっと居続けることが常識になっているんですけど、そもそも同じ学校でずっと学び続ける必要はなくて、ITで全部共有できていれば、どこでだって勉強できるわけです。そういう常識に持っていく。シビレさんが目指されているのは働き方だけの話ではなくて、どういうふうに生きていくのかも含めて、全体を対象として地方を変え、首都圏の人たちの意識さえも変えていくことだと思います。働き盛りの人にとって特に子どもの教育の問題は大きいですから、そこを解決するような道筋も「Seamless Japan」として見据えていますという姿勢を示すと、大きな共感を得られるのではないでしょうか。

——都会で育った子どもの強みもあれば地方で育った子ども強みもありますが、どちらの環境も知っている子どもは、やがて自分のキャリアを考えていくときにも、いろいろな目線で考えられるのではないかとも思います。これからの時代の働き方はどうなっていくと思いますか。

小野 みんなの意識が急激に変わるわけではないかもしれないですが、チャレンジしたい人にとってチャレンジしやすい環境にはなるでしょう。そういう意味では、若い人にとってすごくチャンスが増えますよね。ですから、そのことを「ジブンノ」などを通して伝えてあげるといいと思います。

昔は一つの会社に忠誠を尽くさないといけないみたいな固定観念があって、就業規則にも複業禁止とどこの会社も当たり前にあったのが、今は複業をどんどんしてくださいとなってるわけです。そういうふうに環境は確実に変わってきていますから、あと変わるべきは自分たちの意識ですよね。どんどん制約を設けずに、自由に挑戦しましょうと伝えて、それを若者が理解すれば、自分たちで新しい働き方や新しい事業の立ち上げ方を実践していくのではないでしょうか。

そういう意味ではこのコロナ禍が一つ大きなトリガーにはなっていて、チャンスが生まれていることを認識してどんどん挑戦すればいいと思います。就職氷河期の再来ともいわれ、確かに非常に厳しくもなっているんですが、その分いろいろなチャンスが生まれてきています。今こそやる気のある若者が新しい道を開いていけば日本経済も元気になると思うので、前向きなメッセージを送ってほしいですね。

われわれの時代はとにかく就職しないと始まらないみたいなところがあったけれども、今は十分に環境が整っていて、「Seamless JAPAN」が示すように、地方も選択肢になるし、いきなり就職を目指さなくても複業やプロジェクト参画という選択肢もある。まずはそういうところに入ることによって、自分のやりたいことによりフォーカスしていったり、スキルを磨いたり、スキルは磨けなくても人脈がつくれたりしますよと。

熊本地震の時にボランティアで来た人たちでも、手伝いを通して自分なりに問題意識を持って、次の道に挑戦していく人がいました。会社に入って勤めることだけがキャリアではないんですよね。学生も意識を変える必要があって、とにかく就活しなきゃという発想から脱却して、複業でもいいしプロジェクトでもいいし、とにかく元気な人たちが集まってくれというところに参加するのでもいいし、選択肢は広いので、本当に自分がやりたいことに挑戦してくださいと。そのための環境をシビレが用意しますよということを発信していくといいと思います。

(後編)「蟻の一穴で風穴を開ければ、そこから一気に変わる。」へ

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