ライフスタイル インタビュー

【インタビュー堀口正裕さん】『移住』という言葉にとらわれる必要はない

新型コロナウイルス感染症の感染拡大による社会変容で、ライフスタイルや働き方が大きく変わってきています。リモートワークやシェアオフィスの普及、オフィス移転に伴い地方移住を推進する企業も増え、個人にとっても地方との関わり方を改めて考える機会となっている今。シビレが掲げるシームレスな働き方について、地域や移住に関心のある人や暮らしと地域をつなぐメディア「TURNS」プロデューサー、堀口正裕さんにお話を伺いました。

—シビレの新たなビジョン「Seamless Japan」について率直なご感想をお聞かせください。

堀口 私たちと考え方は共通していると思います。いろいろなところに呼ばれてお話しする機会がありますが、私も移住という言葉はあまり使わなくなりました。人口が減ってきて、ライフステージに合わせて住む場所や働く場所、学ぶ場所は変えていいと堂々と容認している自治体にこそ人が集まっている印象があります。ミスマッチ対策などと言っている場合ではなくて、シームレスにつながって動けることがいいことだと発信できるところしか、これからは残っていかないと思います。

新潟産業大学が今年4月、「ネットの大学 managara(マナガラ)」を開設しました。4年間ネットでデジタルキャンパスライフを送ることができて、学費は年間30万円。場所を選ばず、旅をしながらとかプロスポーツ選手を目指しながらとか地域の伝統工芸の技を習得しながらとか、何々しながら学ぶから「マナガラ」。やりたいことをリアルで突き詰めながらネットで大学資格が取れる、そういう時代ですからね。

一方で、奈良先端科学技術大学院大学という大学では日本人のわれわれも知らないようなすごい研究が行われているんですが、学生や研究者は大学を出ると地域を離れてしまうという課題があります。そこで、地元に根を張った企業や投資家とマッチングするイベントを開いたところ、大きな反響がありました。移住・定住施策も大事なんだけど、外貨を稼げる人材を地域は求めているので、それなら地域に根差したスタートアップをどんどん出していこうと。こうした画期的な研究成果をしっかり社会実装できるような支援を各地域でやっていきたいです。

—新サービス「ジブンノ」では今まで通り移住を伴う転職の支援も行いますが、首都圏にいながらリモートで少し複業をしてみるとか、業務委託で関わってみるとか、居場所を変えずに地方の課題を解決したいという方にメンバーとしてプロジェクトに参画してもらう。そういう形でさまざまな働き方、関わり方をつくっていきたいと思っています。

堀口 すごくいいですね。場所はもうどこでもよくて、自分に合う地域があればそこで仕事ができますから。今、TURNSとTokyo FMがコラボして創った「スカロケ移住推進部」というラジオ番組の1コーナーやTURNSと山梨県とTokyo FMの3者で包括連携協定を結んで誕生した「デュアルでルルル♪」という番組のコメンテーターを務めさせて頂いてるのですが、移住や他拠点居住をしている方をゲストに迎えて話を聞いていると、それが当たり前のような感覚になってきます。

例えば東京の大手の生命保険会社で、ほとんど北杜市にいながらセールスをやっている方がおられました。生命保険の営業って、リアルで家に訪問しないと数字が上がらない印象じゃないですか。実はまったく逆で、お客さんからすると、家に来られると部屋を掃除しないといけないですし、必要なときに必要な情報だけがあればいいので、オンラインでやることによって業績が一気に上がったという話をされていました。

リモートはなかなか難しいといわれる営業職でもそうなので、オンラインの方が数字が上がっているケースはたくさんあると思うんですよね。そういうことがもう当たり前になってきているのが非常に面白い。今は「次の当たり前」をどんどんつくっていけるチャンスでもあると感じます。

—今は10年後がどうなっているのかますます見えにくくなり、自分がどうなっていたいかを持っていなければいけない時代でもあると思います。新サービス「ジブンノ」には、そういう「自分」を見つけてほしいという気持ちも込めています。

堀口 このコロナ禍になって、いらないものが何かみんな分かってしまいましたよね。例えば旅だって目的がないと行かないものになりましたし、コミュニティーも顔だけ出しておけばいいようなものはなくなっています。そうすると自分が一番安心できるところにいかに属すかが、とても重要になってくると思います。「TURNS」でも特集したことがあるんですが、まさに「ジブンノ」はそういうことに通じるサービスではないかと感じています。

—最後に、「ジブンノ」に期待することがあれば教えてください。

堀口 地方創生という名目で莫大(ばくだい)な税金が投下されましたが、課題先進国といわれる日本からその成果を学んでいる国は、今はまだ少ないと思います。シビレさんがやろうとしていること、われわれがやっていることも含めてシームレスにいろんなことがつながって、ライフステージに合わせて自由に仕事や学びができる環境が整ったときに、本当の意味での地方創生になると思います。どこのまちが発展するとか、どこの市の人口が増えたとか、そんなレベルの話じゃなくて、ローカルから直接世界へ、外貨を稼ぐという意味でも強い地方になっていく。そこに寄与するサービスになってほしいですし、私たちも参画したいですね。

ジブンノ編集部ジブンノ運営スタッフが、「キャリア」「働き方」「地域活性」をテーマに情報発信します!シームレスな働き方を体現している方々にフォーカスして、企業・地域の最先端の動きに密着していきます!