【インタビュー吾郷克洋さん】熱い思いがあれば、場所なんてどこでもいい。

株式会社エンライズコーポレーション 代表取締役グループCEO 吾郷克洋さんは2018年6月、仙台に東北最大級のシェアオフィス・コワーキングスペース「enspace(エンスペース)」を開設。ITエンジニア人財の「採用」と「育成」に積極的に取り組み、それに伴う新規事業も次々と立ち上げ、現在はグループ経営で人と事業の成長に注力しています。そんな吾郷さんが考えるニューノーマルな時代における働き方、地方との関わり方や考え方などについてお話を伺いました。

——仙台にもいろいろな起業家さんたちと出会えるようなコワーキングスペースが増えて、文化が根付いてきている印象です。「enspace」はその先駆けとなりましたが、なぜ仙台でそういう決断をされたんですか。

吾郷 私はさまざまな事業をやっているように見られるんですが、常に「人財」を軸に置いています。特に「IT人財が日本を元気にする」ということを掲げて、未経験者でもITエンジニアとして働けるようにアカデミーを開いたり、出口としてITエンジニアの派遣や請負モデルを構築したり、学び続けられるeラーニングの環境をつくったり、さらにはそのサービスを外の企業向けに展開し、ITエンジニアの人材紹介や社員の育成を引き受けたりしています。

それらは東京が全て中心だったので、全国に広げようと思い地方展開を始めました。大企業のシステム投資に対して大手のSIerが受け、そのアンダーでわれわれがやるというモデルだけでは日本全国の課題解決にはならないなと、中小企業向けのDX事業で全国津々浦々、ITエンジニアリングで支援するサービスを始めました。全国のシェアオフィス、コワーキングスペースを拠点に、そこでつながる人たち×ITで事業展開する上で、仙台のエンスペースは一つの実証実験として、5年がかりで東北を盛り上げるための土台づくりはできたかなと思います。

——そのような事業展開の中で地域を越える感覚は最初からお持ちかと思いますが、「シームレスジャパン」という新しいシビレのステートメントについてどう思われますか。

吾郷 専門性を持てば持つほど、年齢も性別も場所も時間も問わずに自由でフレキシブルな働き方ができるようになるのではないでしょうか。私がIT人財にこだわっているのはそこなんです。日本をよくしたいとか地域をよくしたいとかみんな言うけど、自分が何の力を持ってそれをできるかを明確にすべきだと思います。思いだけでは何も変えられません。人脈もお金も、そして専門性というスキルも力の一つです。

そういう意味では、シビレさんの考えに沿うかどうか分かりませんが、私は一度みんな東京に行った方がいいよという考え方です。小さなシェアでは地域を変えることはなかなか難しいと思うし、実際に地域で活躍している人たちは一度視野を広げて巻き込み力を増している人が多いと思うので、もちろん東京じゃなくて海外でもいいんですが、そこで力を付けて視野を広げて専門性を持って地方に帰ると。

小さなことでもできることを増やし続けると、求められることが増えて、おのずとやりたいことができてくるという順番が本来だと思うんです。力がないうちからやりたいことばかり言っていても、子どもが駄々をこねているのと同じで、順番が逆でしょうと。できることが多くなった人たちは地域の大きな力にもなるので、「ジブンノ」がそういう人たちを増やすことに寄与できるといいですね。

——ありがとうございます。吾郷さんから見て、このコロナ禍で働き方の変化で感じることはありますか。

吾郷 エンスペースの運営には大学生のインターンが20人ぐらい関わっているのですが、みんな優秀なんですね。主体性が高くて、分からないことは自分で調べてきて、壁打ちをして、その繰り返しをして成長していく。きっと社会人になっても活躍するだろうなと思って見ていると、そういう人たちは卒業してほぼ全員東京に行くんです。

ところが、この新型コロナを機に今どんどん東北に戻っています。支店への異動願を出して東北に戻ってくる人もいれば、自分の力で東北を盛り上げようと辞めて戻ってきている人もいる。大きな会社やベンチャーにぐいぐい入り込んだ若い人たちが、活躍してから戻ればいいんだけども、我慢できなくて活躍前に戻っていく人たちもいます。それが果たして良い結果を生むのか、それとも中途半端なことになってしまうのか半々だなと思いながら、楽しみにはしています。

——そうした若い人たちのキャリアをサポートすることも「ジブンノ」では行っていきたいです。

吾郷 そうですね。コロナ禍を機に仕事や家族や恋人や生活に対する考え方が変わり、パソコン一つで仕事ができる環境も相まって、自分なりの着想で何かやってみたい、何かできると思っている若い人たちが増えてきていると感じます。

ですから私の言う「力を持たないといけない」ということ自体がもしかしたら古くなりつつあって、何かアイデアがあればパソコン一つで早速取り組み始める方がニューノーマル時代においてはいいのかもしれない。熱い思いがあれば場所なんてどこでもいいじゃないかと。話が一貫していないけど、こっちも柔軟に対応していきたいですからね。10人いたら10人とも考えもやり方も違っていい、型にはまらない自由な時代がくるのかもしれません。「ジブンノ」がそんな時代の働き方を支援するサービスになることを期待しています。

ジブンノ編集部ジブンノ運営スタッフが、「キャリア」「働き方」「地域活性」をテーマに情報発信します!シームレスな働き方を体現している方々にフォーカスして、企業・地域の最先端の動きに密着していきます!